埼玉県警人権侵害



東京高等裁判所・決定



平成一二年(く)第一二八号
 
            決      定
 
            申立人(請求人)  ○  ○  ○  ○
 
 右の者からの石川昌彦、上山岩夫及び氏名不詳の警察官数名に対する特別公務員職権濫用等被疑事件についての付審判請求事件につき、平成一二年三月一五日浦和地方裁判所川越支部がした請求棄却決定に対し、申立人から抗告の申立てがあったので、当裁判所は、次のとおり決定する。
 
            主      文
 
 本件各抗告を棄却する。
 
            理      由
 
 本件各抗告の趣意は、申立人が提出した「刑事訴訟法第四二三条に基づく申立書」記載のとおりであるから、これを引用する。
 論旨は、要するに、本件各付審判請求を棄却した原決定は不当である、というのである。
 そこで、記録を調査して検討する。
 本件付審判請求に係る特別公務員職権濫用の被疑事実は、埼玉県警察本部地域部鉄道警察隊に勤務する警察官である被請求人らが、共謀して、平成一〇年一〇月一日、同警察隊取調室において、請求人を軽犯罪法違反の被疑者として取り調べた際、同日午後三時ころから午後六時三〇分ころまでの間、帰宅を望んでいる請求人に対し、軽犯罪法違反の事実を認め、今後同様の行為を行わないと供述すれば帰宅を許すが、そうしなければ帰さない旨、執ように申し向けて脅迫し、請求人を退去できないようにして、職権を濫用して監禁したというものである。一件記録に徴し、所論の点について検討してみても、被請求人らについて右被疑事実が認められないとして、本件付審判請求をいずれも棄却した原決定は相当であつて、その判断に誤りがあるとは認められない。
 また、黙秘権の告知を不法に怠って請求人に執ように供述を求め、帰宅を許さなかつた被請求人らの行為が脅迫罪や強要罪に該当するとする点については、右各罪が刑訴法二六二条一項所定の罪に該当せず、これらに対する付審判請求が不適法であることは、原決定が説示するとおりである。
 なお、所論は、請求人に対する事情聴取や事実調べを経ずに原決定が行われたと主張して手続の不当を主張するが、記録によれば、請求人が意見聴取の機会を与えられていることは明らかであるから、所論は失当である。
 論旨は理由がない。
 よって、刑訴法四二六条一項後段により本件各抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
 
 平成一二年四月一七日
 
    東京高等裁判所第九刑事部
裁判長裁判官 龍  岡  資  晃
裁判官 植  村  立  郎
裁判官 川  上  拓  一
 
右は騰本である
  同日同庁
  裁判所書記官 中沼祐二



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