埼玉県警人権侵害



川越検察審査会宛・審査申立



2000年4月26日
 
 
検察審査会法第五章に基づく審査申立書
 
 
〒350
川越市宮下町2−1−3
川越検察審査会      御中
 
埼玉県川越市○○  
申立人○○○○
 
 
 
 私から平成11年1月7日付けで告訴した被疑事件について、浦和地方検察庁川越支部検察官佐久間進検事によって、平成11年12月28日付けでなされた、公訴を提起しない処分について、不服があるので、この処分の当否についての審査の申立を致します。
 
 
主 文
 
 上記、不起訴処分が不当であるとの議決を求めます。
 
 
申立の理由
 
 
一、被疑事件の要旨
 司法巡査である石川昌彦(以下、石川巡査という)、警部補である上山岩夫(以下、上山警部補という)斎藤隆夫警部(以下、斎藤警部という)、遠藤精治及び岩崎覚の両巡査部長は、埼玉県警察本部地域部鉄道警察隊に勤務する警察官であるが、共謀の上、平成10年10月1日、埼玉県大宮市錦町630番地所在の同警察隊取調室において、軽犯罪法違反の被疑者として申立人を取り調べた際、同日午後3時ころから同日午後6時30分ころまでの間、帰宅を望んでいる申立人に対し、「自分の行為が軽犯罪法違反に該当するという事実を認め、今後同様の行為を行わないと供述すれば帰宅を許すが、しなければ帰さない。」旨執拗に申し向けて脅迫し、よつて、その間、申立人を同取調室から退去することができないようにしたものである。これは、その職権を濫用して申立人を逮捕、監禁、脅迫、強要したものである。すなわち、刑法第193条(公務員職権濫用罪:公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害したときは、二年以下の懲役又は禁錮に処する。)第194条(特別公務員職権濫用罪:裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁したときは、六月以上十年以下の懲役又は禁錮に処する。)第222条(脅迫罪:生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。)第223条(強要罪:生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、三年以下の懲役に処する。)に問われるべきものである。
 
 
二、認められる事実
 次の事実が認められる。
1.本件被疑者は石川昌彦、上山岩夫、斎藤隆夫、遠藤精治及び岩崎覚である。
2.ところで、石川巡査は、平成10年10月1日午前9時前ころ、埼玉県大宮市錦町630番地所在の前記鉄道警察隊に出勤するため、同県川越市脇田本町39番地19所在のJR川越駅に赴き、発車待機中の川越線大宮方面行きの電車に乗車して発車を待っていると、申立人が同電車内において、JR東日本企画が掲示したたばこの宣伝ポスター2枚にそれぞれステッカーを貼り付けたのを現認した。
3.そこで、同巡査は、申立人を器物損壊事件の被疑者と認め、最寄りの川越警察署に同行を求めて事情聴取等の取調ベを実施するため、申立人に対し、警察官であることを告げて、同駅で降車を求めたところ、申立人がその日会議のため、この電車で大宮に行かないわけにはいかないということだったので、その都合を考え、申立人に対し、JR大宮駅にある鉄道警察隊まで同行するよう要求すると、申立人は右同行を承諾した。
4.申立人は、石川巡査とともに同日午前9時15分ころ、前記鉄道警察隊のJR大宮駅構内に設けられた事務室に到着し、石川巡査や上山警部補から取調室に入るよう促されたが、同室が狭く、精神的に圧迫を受ける、脅迫されやすい環境にあるので入るのを拒否していたものの、そのうち石川巡査らに強要され、やむなく同室に入つた。
5.その後石川巡査は、その取調室の扉を開放した状態で、同室に置かれた机を挟んで同室の奥側に申立人を座らせ、その前の同室の出入口側に石川巡査が座り、申立人の意志で退出することを困難にした状態にして、まず申立人の人定事項の確認を行うため、申立人に対し、身分証明書の提示を要求して、申立人から○○○○大学発行の顔写真付きの氏名、生年月日等が記載された職員証の提示を受けるとともに、その住所を聴取するなどし、身元の確認ができた。
6.そこで、同巡査は、申立人に対し、前記のステッカーを貼った行為が器物損壊罪に該当する旨説明し、証拠品であるそのステッカーの提出を求めたのに対し、申立人はそれを拒否していたが、石川巡査がさらに提出しない限り退出させないなどと強引に述べて申立人の自由の侵害をする旨告知してその提出を求めると、同日午前9時35分過ぎころ、申立人は不本意ながらその提出に応じた。同巡査は、そのステッカーが申立人がたばこの宣伝ポスターに貼付した物と同種の物であることなどを確認した後、申立人の面前で任意提出書を作成し、それに署名するよう要求した。
7.すると、申立人は、石川巡査に対し、そのステッカーをどのように扱うのか質問したので、同巡査がそのステッカーの写真を撮影し提出者の意見に従って返還することなどを説明すると、申立者は確実に返還する旨その任意提出書の提出者の処分意見欄に記載し、かつ、提出は任意でなく石川巡査から申立人の自由の侵害を告知されたためにやむを得ず提出するものである旨述べた上で、署名してそのステッカーを提出し、同日午後に再度出頭するようにとの石川巡査の要請に応じることを約束し、同日午前9時45分ころ前記取調室を出た。
8.その後石川巡査は、同日午後1時30分ころ、申立人が再度鉄道警察隊事務室に出頭してきたので、取調室において、ドアは開放された状態のまま前同様に座らせ、事情聴取等を再開することにしたが、申立人が昼食を食べていないというので、持参した昼食を食べさせながら取り調べ等を開始することにした。
9.そして、石川巡査は、まず申立人に対し、午前中に任意提出を受けたステッカーの還付手続きをするため、申立人にステッカーを返還すると、申立人がそれをバッグにしまったので、引き続き、申立人に対し、還付請書にその署名を求めたところ、申立人が、その請書の被疑者欄にあらかじめ申立人の氏名が記載されていることなどが不当であるとして納得せず署名を拒否するので、一般的に還付手続きではあらかじめ被疑者名等が記載された還付請書に署名をしてもらっていることなどを説明したが、申立人は納得せず署名しなかった。
10.そこで石川巡査は、申立人に対し、被疑者欄に申立人の名前を記載せずその欄を空欄にしたものへの署名を求めると、申立人はこの空欄をどうするのかと石川巡査に質問した。石川巡査は、取り調べ終了後申立人の名前を自ら記載すると答え、公然と公文書の改竄(追加記載)をする意思である旨述べたので、申立人はこの不当性を主張し、署名に応じなかった。
11.そこで石川巡査はやむなく、申立人にステッカーを返還しながら、その還付請書に署名が貰えないまま被疑事実についての取り調べを進めることにした。
12.そこで、石川巡査は、同日午前中に申立人を帰した後、同人の被疑罪名について鉄道警察隊内部で検討したことに基づいて申立人を軽犯罪法違反の被疑者として取り調べをすることにした。そのころ、上山警部補も加わり、取調室の入り口側に座った。両警察官は、申立人に対しポスターにステッカーを貼った事実を確認すると、申立人がそれを認めたので、申立人の行為が軽犯罪法違反に当たるという警察の判断を説明したが、申立人は自己の行為が同法違反に当たる犯罪になることを争い正当性を主張して納得しなかった。
13.なお、この取り調べにあたって、石川巡査ら、犯行に加わった警察官はいずれも、刑事訴訟法第198条第2項に定められた、「被疑者の黙秘権の被疑者に対する告知」を不法にも行わなかった。この告知は取り調べの始めだけでなく、当日、最後まで行われなかった。
14.取り調べは、その後、前記斎藤隆夫、遠藤精治及び岩崎覚らの警察官が加わり、あるいは交代して行われた。この間、常に狭隘な取調室の奥に申立人を座らせ、出入り口側に複数の警察官が座って、申立人を威圧し、その意思にしたがって退出することができない状態で行われた。取り調べは、警察官らが「自分の行為が軽犯罪法違反に該当するという事実を認め、今後同様の行為を行わないと供述すれば帰宅を許すが、しなければ帰さない。」という趣旨の主張を行い、申立人にその旨供述させることのみを意図したものであり、申立人が罪にあたらない旨の見解を述べると、やがて警察官は「いつまで同じことを言っているんだ、子供じゃねえんだぞ」などという大声、罵声を出したりするものとなり、これによって申立人に恐怖心を与え、申立人の意思に反する供述を求めるものであった。これは、取り調べが本来、真実を明らかにするべきものであるにもかかわらず、この趣旨を違え、警察官の意思、判断を被疑者の意思に関わらず、無理矢理受け入れさせるための強要の場とするものとなった。
15.この取り調べにあたって、警察官は「悪いことをしました、これからは同様の行為をしません」という、申立人の意思に反する供述を求め、このような、申立人の意思に反する供述をしなければ帰宅させないと述べた。
16.長時間に渡る自らの脅迫にも関わらず、申立人の意思に反する供述を得ることができなかった警察官達は、申立人のそれまでの言動などから、当日引き続き申立人に対してこのような違法な取り調べを継続しても目的とする警察に都合の良い、申立人を不利にする供述を得ることは困難と考え、申立人に身柄引受人を付して帰宅させることにした。
17.そこで、石川巡査らは、申立人に対し、その妻を身柄引受人にできないか尋ねると、妻は申立人を監督できない、また申立人には身柄引受人がなくても帰宅する権利がある、妻に限らず引受人を呼ぶなどという行為を警察はするべきでないと言って、警察が引受人を呼び出すことを拒否した。そこで、石川巡査らは、申立人の承諾を得ることなく、同日午後2時ころ、申立人が勤務する同県○○町所在の○○○○大学に電話連絡をし、申立人が○○をする○○学教室の○○である○○○○(以下、○○という)に身柄引受人になることやすぐに前記鉄道警察隊に来ることの承諾を得た。
18.石川巡査らが、○○を身柄引受人として呼びだした旨申立人に告げると、申立人は、○○にも申立人の監督をすることはできない、○○を呼ぶことは、○○にとっても、申立人にとっても迷惑である。特に○○の迷惑を顧みず、警察の誤った判断に原因する申立人の不利益(不法な拘束など)への救援を理由として、警察が○○への迷惑(職場を離れ、遠路警察隊まで出向く行為)を要求することは申立人にとっての不利益である旨述べ、抗議した。
19.しかし、石川巡査らは、この呼び出しを中止しなかったばかりか、さらに申立人の勤務する大学の学長、○○○らの名をあげ、「誰でも呼び出すことができる、迷惑のかけついでに呼んでみようか」と述べ、警察官によるさらなる不当行為によって申立人が被る不利益を示唆して、申立人にその意思に反する供述を求めた。
20.取り調べにおける事実の確認はすぐに終わり、取り調べは石川巡査らによる申立人に対する執拗な要求、脅迫の繰り返しとそれに対する申立人の拒否の堂々巡りの情況となったので、申立人から上山警部補に対し、帰宅したいとの申出があった。しかし同警部補は○○が身柄引受人として来ることになつたので、それまで待つように要求し、申立人を同室に在室させることにした。これによって、申立人はその意思に反して同室に拘束されることになった。
21.鉄道警察隊では○○が到着するのを待っていると、前記の電話をしてから2時間程経過した同日午後4時過ぎころ、同人が事務室に到着したので、会議室に案内し、斎藤警部と石川巡査が、同人にそれまでの事情を簡単に説明し、最後に身柄引受書に署名して貰った後、申立人を同室に案内し、帰宅させようとしたところ、申立人はその身柄引受書の文面を見て、○○に、引受書に書いてあるように、○○が今後申立人が同様の行為をしないよう申立人の監督をする、また、○○が警察の要請に応じて申立人を警察に出頭させるなどという事が可能であるのか、と質問したところ、同人が可能でないと答えたため、できないことをすると約束するような文書を書くべきではないと申立人が○○に助言し、その結果○○がそれを望んだため、警察官が既に作成し、○○に十分納得させることなく、あるいはできないことでもすると形だけ書いておけば良いなどという偽計を用いて署名させた身柄請書を廃棄し、その場にいた警察官に白紙に○○が納得のいく文面の身柄請書を、警察官達にはこれの作文ができなかったため、警察官達に対する申立人による指導のもとにこれを作成させた後、同日午後6時30分ころ、申立人を○○とともに鉄道警察隊事務室から帰宅させた。
 
 
三、求められるべき判断
 上記事実によると、本件は、申立人が電車内のたばこの宣伝ポスターに、たばこの健康被害を訴え、ポスターの不当性を訴え、その撤去を求めるステッカーを貼り付けたため、それを現認した鉄道警察隊の警察官である石川巡査が申立人を軽犯罪法違反等の関係法令に違反する被疑者として同警察隊の事務室に同行を求め証拠品の提出を受けた後、その同意を得てその日の午後からも引き続きその出頭を求めた。午後申立人が出頭した後、刑事訴訟法に基づく黙秘権の告知を怠った不法な取り調べ、なおかつ申立人の自由の侵害を告知して脅迫することによってその意思に反する供述を求めるという違法な取り調べを実施した。また、申立人が帰宅したいとの申し出をしたにも関わらず、被疑者らはこれを認めず、不法に申立人を拘束した。そのうち被疑者らは、申立人の言動などからその申立人の意思に反し、警察の意図に沿った供述を得ることは困難と思い、申立人に身柄引受人を付し帰宅させることにし、引受人に電話連絡をして、同人がその事務室に到着するまでの時間と、同人が到着してからも、同人にその間の事情を説明し、申立人の身柄を引き受けさせて身柄引受書に署名を貰い帰宅させた。申立人が帰宅したい旨申し出た遅くとも午後3時前頃から申立人を帰宅させた午後6時30分頃までの間の相当時間、申立人を申立人の意思に反して取調室等に在室させた。
 この間における石川巡査ら被疑者らの措置には、申立人の意向、意思を無視し、警察官の威力を用いて強引に従わせるなどの不当な部分がいくつかあるが、その全てを違法と判断すべきであるとは必ずしも言えない。しかし、次の点については警察官の職務として違法、刑法違反行為であると判断すべきであることは明らかである。すなわち、
1.石川巡査らは、申立人が帰宅の意思を申し述べたにもかかわらず、その意思に反して、帰宅させない旨を宣言し、事実取調室の入り口にいて、申立人を取調室の中に存在せしめ、もって申立人を取調室より退出できない状況に置いた。これは逮捕、監禁にあたり、警察官の職務にあるものがこれを行ったことから、特別公務員職権濫用罪(裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者がその職権を濫用して、人を逮捕し、又は監禁した)に相当する。
2.石川巡査らは、申立人が帰宅の意思を申し述べたにもかかわらず、その意思に反して、帰宅させない旨を宣言し、事実取調室の入り口にいて、申立人を取調室の中に存在せしめ、もって申立人を取調室より退出できない状況に置いた。当然、申立人には取調室に存在する義務はなかったし、また帰宅する権利を有している。警察官たる公務員がその職務を濫用してこれを行ったことから、これは公務員職権濫用罪(公務員がその職権を濫用して、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した)に相当する。
3.石川巡査らは、申立人の行為が軽犯罪法違反に該当するという事実を認め、今後同様の行為を行わないことを約束しなければ帰宅を許さない旨執拗に申し向けた。これはまさしく、申立人の帰宅するという自由に対し害を加える旨を告知し、これによって申立人の意思に反する供述をさせるべく脅迫したものであり、脅迫罪(生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した)に相当するものである。
4.石川巡査らは、申立人の行為が軽犯罪法違反に該当するという事実を認め、今後同様の行為を行わないことを約束しなければ帰宅を許さない旨執拗に申し向けた。それのみならず、現実に申立人が帰宅できない状況に陥れた。これはまさしく、申立人の帰宅するという自由に対し害を加える旨を告知し、これによって申立人の意思に反する供述をさせるべく脅迫し、これによって申立人にその義務のない取調室に存在することを行わせ、帰宅するという権利を妨害したものであり、強要罪(生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した)に相当するものである。
 
 なお、石川巡査らは、同日午前中には申立人の意向を尊重して事情聴取を打ち切り申立人を鉄道警察隊の事務室から帰らせていることをもって、また、さらに同日午後再度出頭した申立人の身柄を身柄引受人に引き受けさせ、申立人を帰宅させていることをもって、石川巡査らの本件被疑者とされる警察官に、鉄道警察隊の取調室に申立人の身体をことさら引き留めて、逮捕、監禁する意思があつたことを認めることができないとする判断があり得るが、本被疑事実は午前中の取り調べではなく、午後の取り調べ時に実行されたものであるという事実、また本件被疑事件は申立人を身柄引受人に引き受けさせるまでの期間の犯行についてのものであることから、このような判断は合理性を欠いている。さらに、取り調べの際、逮捕、長期に渡る監禁の意思がなかったにしても、脅迫の事実、強要の事実があったことは明らかである。
 
 したがって、以上検討したところによると、検察官は、被疑者らに対し、その被疑事実について、いずれも起訴すべきであった。
 
 
四、告訴の経過
1.申立人は、平成10年10月1日に被害を受けた後、再三に渡って埼玉県警察本部長、及び鉄道警察隊に対し、文書をもって本事件に対する見解を求めた。しかし、警察からの返事は、黙秘権の不告知、公文書偽造の未遂など、より明らかな犯罪事実についてさえもその事実を認めないものであった。警察は虚偽によって自らの犯罪行為を隠蔽しようとした。警察は、その犯罪行為について反省することなく、逆に申立人からの質問、批判に対して、申立人がこれを続けるなら、申立人に対する取り調べを再開し、立件するなどと言って、申立人を脅迫し、警察自らの犯罪行為を不法に隠蔽しようとした。
2.これに対して申立人は、このまま警察の不法行為を見逃すことは、冤罪事件を生む原因となり、告訴することによって警察の反省を求めることが社会正義を守るため必要欠くべからざることであると判断し、平成11年1月7日やむなく告訴に至ったものである。
 
 
五、不起訴処分の経過と問題点
1.本件、告訴に対して検察官は平成11年12月28日付けで、不起訴処分を行った。
2.処分が不起訴であったことの理由は、1.犯罪行為を立証するための十分な証拠がないこと、2.犯罪行為が行われたとしても、刑罰をもって処分するのが適切な程、重大な犯罪ではないこと、の2点であると説明されている。
3.第1点については、本件が警察署(警察隊)の取調室という密室で行われた警察官による事件であることから、物的証拠が残ることがきわめて難しいものであるという本件の特殊性に対する考慮を怠っている。密室における警察官の違法行為を黙認することのない判断が求めらる。
4.第2点のような寛大な処置は、犯人がその罪を十分反省している時のみにとられるべきである。事件当日午後の5時間に渡る取り調べ及び拘束は、刑事訴訟法第198条に違反する不法行為で、申立人に申立人の意思に反する供述を求め、その旨供述しなければ家に帰さないと述べ、現実に家に帰さなかったものである。申立人が帰宅することを要求したにもかかわらず、これを彼らが職権を濫用して妨害、拘束した、そしてこの間、脅迫、強要もが行われた。これが事実であるが、にもかかわらず被疑者らは、申立人に対して供述をするよう依頼した、身元引受人が来るまで待つことを依頼したのだなどと述べ、言い訳け、虚偽の供述をしてる。一度は依頼があったにしても、申立人は即座にそれを拒否したものであり、警察が身元引受人を呼ぶこと自体が申立人の意思に反することであることを、申立人は警察官に明確に申し述べており、身元引受人の到着を申立人が同意して待っていたという判断が正当だとは到底考えられない。被疑者らの行った行為がその強大な警察権力に基づく職権の濫用による脅迫、強要ではなく依頼だけであるという判断が正しくないことは、現実に申立人が5時間という長時間警察隊内の密室に引き留められたという事実、状況からみて明らかである。
5.被疑者らはこのように、虚偽の申し立てをして罪を免れようとしている。罪の反省がない。警察官が行った犯罪は、例えそれが重大犯罪ではないとしても、本人達の反省がない以上これを厳しく罰すべきである。これは、今後の警察の捜査、取り調べが適正、適法に行われるようにするために必要なことである。したがって、今回の不起訴処分は適切でない。今回の不起訴処分は社会正義に反し、不当である。
 
 
以上



埼玉県警人権侵害