埼玉県警人権侵害



浦和地方裁判所川越支部宛・抗告



2000年3月21日
 
 
 
刑事訴訟法第四二三条に基づく申立書
 
 
川越市宮下町2−1−3
浦和地方裁判所
川越支部第一部     御中
 
 
 
 
 
 私の行った刑事訴訟法二六二条一項に基づく付審判の請求に対して貴裁判所のした決定(平成一二年(つ)第一号)に対し、刑事訴訟法四二三条に基づいて抗告をします。よろしくお取り扱いの程お願い申し上げます。
 
 
 抗告の理由は次の通りです。
 
1.本決定は、その理由の「一、本件請求の要旨」の中で請求人の告訴の日を平成一二年一月四日としているが、これは平成一一年一月七日の誤りである。
この誤りは諸文書の記録により明らかである。
 
2.また、請求人が、浦和地方検察庁川越支部検察官が行った不起訴処分の通知を受けた日について、平成一二年一月二九日としているが、これは平成一一年一二月二九日の誤りである。
この誤りは諸文書の記録により明らかである。
 
3.本決定は、その理由の「三、当裁判所の判断(三)」の中で「会議のため午前九時四〇分ころまでに大宮駅に到着したいということだった」としているが、これは、「会議のためこの電車で大宮に行かないわけにはいかないということだった」とすべきところの誤りである。
これは、当該電車の大宮駅到着予定時刻が午前九時一五分であるところから、「三(三)」に記載されたような発言は不合理であることから明らかである。さらに請求人は浦和市での一〇時開始の会議に出席予定であり、九時四〇分には大宮駅を出なければいけないと考えていたことが明らかであり、したがって「三(三)」に記載されたような発言は不合理である。
 
4.本決定は、その理由の「三、当裁判所の判断(四)」の中で「請求人は(中略)取調室に入るよう促されたが、同室が狭いので隊長室がいいなどと言い入るのを渋つていたものの、そのうち石川巡査らに説得され同室に入つた。」としているが、これは「請求人は(中略)取調室に入るよう促されたが、同室が狭く、精神的に圧迫を受ける、脅迫されやすい環境にあるので入るのを拒否していたものの、そのうち石川巡査らに強要され同室に入つた。」とすべきところの誤りである。
これは、当時請求人は取調を受ける義務がないと考えていた事実、隊長室の存在を知らない事実、最後まで取調室への入室を拒否していた事実から明らかである。
 
5.本決定は、その理由の「三、当裁判所の判断(六)」の中で「ステッカーの提出を求めたのに対し、請求人はそれを拒否し、そのステッカーは自分の物であることなどを申し立て提出を拒否していたが、石川巡査がさらに説得すると、同日午前九時三五分過ぎころ、その提出に応じた」としているが、これは「ステッカーの提出を求めたのに対し、請求人はそれを拒否していたが、石川巡査がさらに提出しない限り退出させないなどと述べて提出を強要すると、同日午前九時三五分過ぎころ、不本意ながらその提出に応じた」とすべきところの誤りである。
これは、当時請求人は浦和での同日午前一〇時開始の会議に遅刻しないため、提出の義務がないことを認識しながら上記のように時間がないという請求人の弱味につけ込んだ石川巡査の強要の発言によってやむを得ず提出した事実から明らかである。また、ステッカーが自分の物であることは、これを提出する理由にはなっても提出しない理由にはなり得ないことから、このような理由で提出しないなどと請求人が申し立てるということは論理的な整合性を欠くことから事実でないことが明らかである。
 
6.本決定は、その理由の「三、当裁判所の判断(六)」の中で「そのステッカーが前記犯行に供した物と同種の物であることなどを確認した後」としているが、これは「そのステッカーが請求人がたばこの宣伝ポスターに貼付した物と同種の物であることなどを確認した後」とすべきところの誤りである。
この誤りは、請求人の貼付行為が「犯行」すなわち犯罪行為であると故なく決めつけることが適切でないことから明らかである。すなわち、請求人の表現行為を犯罪行為と故なく決めつけた警察官の独断をそのまま裁判官が無批判かつ根拠なく受け継いだものであり、裁判官による不適法な判断であると言わざるを得ない。
 
7.本決定は、その理由の「三、当裁判所の判断(一四)」の中で「○○に責任をとれるのかなどと強く迫ったため、同人の立場を考えて最終的にはその場にいた警察官に白紙に請求人の納得のいく文面の身柄請書を作成させた」としているが、これは「○○に、文書に書いてあるように、○○が今後請求人が同様の行為をしないよう請求人の監督をする、また、○○が警察の要請に応じて請求人を警察に出頭させるなどという事が可能であるのか、と質問したところ、同人が可能でないと答えたため、できないことをすると約束するような文書を書くべきではないと請求人が○○に助言し、その結果○○がそれを望んだため、警察官が既に作成し○○に十分納得させることなく、あるいはできないことでもすると形だけ書いておけば良いなどという偽計を用いて署名させた身柄請書を廃棄し、その場にいた警察官に白紙に○○が納得のいく文面の身柄請書を、警察官達にはこれの作文ができなかったことのため、警察官達に対する請求人による指導のもとにこれを作成させた」とすべきところの誤りである。
 
8.本決定は、請求人の請求文書の他は、担当検察官の取調文書記録のみをもとに行われたものであり、これについての裁判所による請求人に対する事情聴取あるいは事実調べを経ずに行われたものである。したがって、不起訴処分の決定をした検察官の意見を偏重した虞が強いものである。
 
9.本決定は、請求人がその告訴の際に提出した添付書類の中で指摘した、@本件被疑者は、請求人の取調にあたって刑事訴訟法第一九八条に基づく黙秘権の告知を不法に怠ったこと、A同告知を怠っただけでなく、同法に違反することを承知しながら、請求人にその意思に反する供述をする事を執拗に申し向け、Bさらに,これをしなければ請求人の上司である○○○○大学学長などに連絡するなどして請求人に不利益を及ぼすことを示唆して、あるいは、これをしなければ請求人を帰宅させないと宣告して、憲法に保障された請求人の自由権を侵すことを示唆して、請求人にその意思に反する供述を求め、脅迫したこと、Cまた被疑者による取調は、憲法に保障された請求人の帰宅するという自由を犯していたという事実について言及していない。したがってこれについての審理が十分でないと認められる。
 
10.本決定は、本申立書第一項及び第二項に述べたように、本件の基本的事実である告訴の年月日を約一年、請求人が不起訴処分の通知を受けた年月日を約一か月誤ったうえで行われたものであり、したがって告訴から不起訴処分までの期間について、実際は約一二か月であったところを一か月未満であると誤認して行われたものである。したがって、告訴から不起訴処分までの検察官の捜査検討の詳細について、その期間の誤認にもとづく誤認をもたらした可能性が高い。また、このような基本的事項の誤認があったことは、その他の事項に対する審理の適切性を疑わしめるに足る十分な根拠であり、その決定が適切であるとは到底考えられないものである。
 
11.したがって、以上の問題点を総合すれば、本件については、検察官の不起訴処分をそのまま認めることなく、改めて裁判所において事実審査を行うのが適切である。
 
 
 
以上



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