福島県「健康調査」資料中の、放射線による甲状腺癌増加を示す証拠
 
第23回「県民健康調査」検討委員会が2016年6月6日(月)に開かれた。そこで示された資料には、2011年福島第一原子力発電所事故による放射線曝露によって子供の甲状腺癌が増加したことを示唆する証拠(evidence)が含まれている。検討委員会がその指摘をしていないのでここに示すことにする。
ここで参照する資料は
「第23回福島県「県民健康調査」検討委員会(平成28年6月6日)の資料について」
https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21045b/kenkocyosa-kentoiinkai-23.html
 
から得られる、資料1、資料2-1と資料2-2である。
 
資料1、P@-6,7に外部被曝線量推計結果 推計期間4か月間(3/11-7/11)があり、ここから年齢別・線量別調査対象者数(被爆者数)が得られる。0-9歳と10-19歳は甲状腺検査の対象者に(ほぼ)対応する。
資料2-1、PA-7は甲状腺検査(本格検査)で細胞診等による悪性ないし悪性疑いとされた57人のうち被曝線量が確認できた31人の被曝線量である。
資料2-2、PA-28は甲状腺検査(先行検査)で細胞診等による悪性ないし悪性疑いとされた116人のうち被曝線量が確認できた65人の被曝線量である。
 
これから次の表を作ることができる。
 
本格検査で悪性となった者の割合が曝露線量が高くなるに従って高くなっている。
1未満の者に対して、2未満は2.8倍(3.37/1.20)、5未満は3.8倍(4.50/1.20)である。これは放射線曝露が甲状腺癌を発生させていることを示唆する事実(証拠)である。
 
データの欠点についての批判は大いにあり得る。
本格検査はまだ終わっていない。二次検査の結果がすべて揃っているわけではない。対象者の被曝線量推定値が全員から得られているわけではない。対象者の全員が甲状腺検査を受けているわけではない。がんと診断された者についてもその一部しか被曝線量が得られていない。
など、
 
上の表が甲状腺癌の罹患率を示すと考えるには無理がある。例えば甲状腺検査は18歳までが対象であるが、使った分母は19歳までである。観察期間は1人1人違っているだろうけれど、みんな同じものとしている。1人1人の観察期間(先行調査受診時から本格調査受診時までの期間)を使って曝露量別の罹患率をより正確に計算することは(福島県には)できる。早急にやるべきである。
しかし、それを待たなくても、例えば被曝線量の高い者が積極的に甲状腺検査を受けたなどというあまり合理的でない仮定をしないとこの結果が放射線の影響を示さないとは言いにくい。
 
これまで、そもそもこんな低い線量で影響が出るはずがないと言って被曝の影響を否定してきた。チェルノブイリの経験ではなく、福島の経験、事実、データをもとに考えるべきである。曝露量推定値が2mSv未満と言っても実際はもっと高いのかも知れない。(甲状腺癌を作る)内部被曝はもっと高いのかも知れない。低線量でも影響があるのかも知れない。
ここに示されている被曝推計量が正確でないにしても、この値が高い者は甲状腺の(内部)被曝線量が高いだろうと(当然)推測できれば、ここに示された事実は放射線の影響を示唆すると考えて良い。
 
詳しくは述べないが、この結果はこれまで問題にしてきた「スクリーニング効果」の影響を受けない。
 
表中に一緒に示した先行検査の結果は示唆的である。ここでは悪性となった者の割合が線量と関係ない。先行検査は被曝以前に罹患していた者まで含む有病率の比較であることの反映であるかも知れない。ここで関連が見えず、被曝後の罹患率にのみ関与する本格検査では関連が見えるということは、本格検査の結果の重大性を示唆する。これまではなかった証拠が出た。
 
以上
 
以下は上の表を作るのに利用した福島県の資料
 
 
福島県資料1P@-6
 
福島県資料1 P@-7
 
 
福島県資料2-1 PA-7
 
 
福島県資料2-2 PA-28